1945年小児精神科医のR.スピッツは2ヶ所の捨子の養護院で収容児の健康状態を比較研究しました。
一つの養護院は保護衛生の面で非の打ちどころのない設備を誇っており、
乳児たちは消毒された白いシーツのある乳児用ベッドにひとりひとり別々に寝かされ、
マスクをした看護婦ができるだけ赤ん坊に触らないよう、
注意しながら世話をしました。
これに反して、もう一つの養護院は不衛生で、
大きな部屋に大勢の乳児を収容し、
赤ん坊たちはお互いに接触したり、 ボランティアの保母たちにまつわりついていました。
ところが、先の設備のよい養護院の乳児の死亡率が非常に高く、
特に子供たちは成長障害を起こして死んでいったのです。
これは乳幼児のころの身体的接触がいかに大事かを物語っています。
乳幼児のころの「なでる」「さする」といった身体的接触は
「自分は大切にされている」という自分への信頼、
他人の存在の意味を感じさせるとても大切な行為です。
これにより子どもたちは心の安定を得ます。
少し大きくなってからだと、
「ほめる、はげます、認める」といった精神的接触が必要になってきます。
そのような接触を私たちは普段どれほど子供たちに与えているでしょう。
昨今の信じられないような少年犯罪を見ていると、
自分を否定し、
他人を否定し、
人生を絶望的で虚無的なものとし、
自分のカラに閉じこもり、
自暴自棄になって犯罪を犯しているように思えます。
それは決して突発的なものではなく、
親と子がいかに身体的に精神的に接触を保ってきたかにかかわっていると思います。
親にとって子供の教育は何にもまして大仕事、
命をかけての大仕事といっても過言ではないでしょう。
決して一朝一夕で、ものの本を読んで、できた気になって成し得るものではありません。
長い年月の愛情の結晶です。そしてそれが次の世代に確実に受け伝えられます。