親の働く姿は子供にはなかなか見えません。
「お父ちゃんもがんばって仕事をしているんだから、お前も勉強ガンバレ!」といったところで、
実際に働く姿が見えないのですから、
子供には実感がわいてきません。
家に帰ったらご飯を食べて、
風呂に入って、
TVを見たり、
新聞を読んだり好きなことをやっているようにしか見えていないかもしれません。
「いいなあ、大人は好きなことやって」と思っているかもしれません。
でも実際は物をひとつ売るにもお世辞を言ったり、
お辞儀をしたり、
いやな仕事でも文句も言わず毎日くたくたになるまで懸命に働いています。
こんな話しを聞いたことがあります。
子供がある夜目を覚ますと、机に向かう父の姿を見ました。
「こんな夜遅くに何をしているんだろう」
不思議に思ったその子はしばらく父の姿を観察していました。
父は人の気配に気づくことがないまま、
ひたすら分厚い本とノートと格闘していました。
そんな父の姿を夜毎見かける日が続きました。
半年、1年と...。
そして2年と少し経ったある日、
父の達成感に満ちた満足げな顔を見たのです。
何かの試験合格に向けて仕事の合間をぬい、
勉強を続けていたことをあとで知りました。
子供がテストでひどい点取ってきても、
「もっと勉強しろ!」と怒鳴るようなお父さんではありませんでした。
自分の生きる姿を見せること、「語らず悟らせる」に徹しました。
「子は親の背中を見て育つ」といわれますが、
それは親の生きる姿、生きざまを子供に見せることでしょう。
生きざまを見ることは子供にとって迫力のあるものです。
その迫力、エネルギーが子供の心に響き、言葉では語れない何かを学ぶのです。